ロミオとジュリエット(Romeo and Juliet, Romeo und Julia)  138回目の公演  2005年6月24日(金)


ー シェイクスピアの悲劇による3幕のバレエ ー


音楽 セルゲイ・プロコフィエフ 振付・演出 ジョン・ノイマイヤー
舞台美術・衣裳 ユルゲン・ローゼ 指揮 クラウスペーター・ザイベル
演奏 フィルハーモニッシュ・シュターツオーパー・ハンブルク



モンタギュー家
モンタギュー伯爵夫人 スザンヌ・メンケ
モンタギュー伯爵 ウラディミル・コシチュ
ロミオ、彼らの息子 オットー・ブベニチェク
ベンヴォーリオ、ロミオの従兄弟
 アルセン・メグラビアン
モンタギュー家の従僕
 
アブラハム 服部有吉
 
アンジェロ ボイコ・ドセフ
 
マルコ アントナン・コメスタッッ
モンタギュー家の侍女
 
シルヴィア アーニャ・ベーレント
 
フランシスカ クリステル・チェンエレッリ
 
マルガレータ ミリアナ・Vracaric
 
パウリア ステファニー・ミンラー
 
リヴィア ディナ・ツァリポヴァ
 
マリア カロリナ・マンクーソ



エスカラス、ヴェローナ大公 エデュアルと・ベルティーニ
マーキューシオ、大公の親族、ロミオの友人 イリ・ブベニチェク
パリス伯爵、大公の親族 エミル・ファスクートディノフ
ロレンツォ修道士 エドウィン・レヴァツォフ
娼婦
イモジーン アンナ・ラウデール
ヴィオレンタ イーリナ・クロウグリコヴァ
ビアンカ、 マンチュアの娼婦 オデット・ボーヒェート


旅役者の一座
イザベラ ゲイレン・ジョンストン
ヴァレンティン ピーター・ディングル
セバスティアン、彼らの息子、軽業師 アレクサンドル・トラッシュ
ルチアナ マリアナ・ザナットー
ラヴィニア カトリーヌ・デュモン
アントニオ ヨハン・ステグリ


従僕、見物人、市場の商人、花を売る娘、ヴェローナの評議員、市民

キャピュレット家
キャピュレット伯爵夫人 アンナ・ポリカルポヴァ
キャピュレット伯爵 セバスティアン・ティル
ジュリエット、彼らの娘 シルヴィア・アッツォーニ
ジュリエットの従姉妹
ロザライン アンナ・ハゥレット
ヘレナ リサ・トッド
エミーリア ジョージーナ・ブロードハースト
ジュリエットの乳母 アン・ドラウアー
ペーター、彼女の従僕 エイドリアン・アンゲマッハ※※
ティボルト、ジュリエットの従兄 カーステン・ユング
キャピュレット家の従僕
サンプソン アントン・アレクサンドロフ
グレゴリー アンドリュー・ホール
ポットパン ホアキン・クレスポ・ロペス
キャピュレット家の侍女
ルチェッタ オデット・ボーヒェート
グラティアナ アリソン・ブルッカー
カミラ フィリパ・クック
ウルスラ ステラ・カナトゥーリ
ネイル 大石裕香
スーザン アンナ・Rabsztyn
キャピュレットの騎士
ロリス・ボナーニ
ステファン・ボウゴン、コンスタンティン・ツェリコフ
ステファノ・パルミジャーノ
ロザラインの同伴者
マリア・コウソウニ
スカイ・ハリソン、チェルシー・ウィンター

キャピュレット家の舞踏会の客
アーニャ・ベーレント、オデット・ボーヒェート、アリソン・ブルッカー、
クリステル・チェンネレッリ、フィリパ・クック、ゲイレン・ジョンストン、
ステラ・カナトゥーリ、イリーナ・クロウグリコヴァ、アンナ・ラウデール、
ステファニー・ミンラー、大石裕香、アンナ・Rabsztyn、
ミリアナ・Vracaric、マリアナ・ザナットー、ディナ・ツァリポヴァ
アントン・アレクサンドロフ、ロリス・ボナーニ、ステファン・ボウゴン、
アントナン・コメスタッツ、オーカン・ダン、ボイコ・ドセフ
アンドリュー・ホール、エドウィン・レヴァツォフ

※ ティアゴ・ボーディンの怪我による代演
※※ ハンブルク・バレエ学校の学生


maddieさんにお願いして感想を書いていただきました。感謝。
以下はmaddieさんの寄稿です。(S)

回初めて見るノイマイヤー版をとても楽しみにしていました。

ティアゴが怪我のため、残念ながらエレーヌとのフレッシュコンビをみることは出来ませんでした。 この日はロミオがオットー・ブベニチェク、ジュリエットはシルヴィア・アッツォーニでした。シルヴィアのジュリエットは、一昨年のバレエフェスで抜粋を見て一度全幕を見たいと思っていましたので、それはそれで念願がかなったので嬉しいことでした。

シルヴィアは14歳のジュリエットそのもの! 可愛らしくて情熱的で、行動的な女の子にでした。 そして「無分別な若者を踊るには雰囲気が落ち着きすぎでは?」と思ったオットーでしたが、私の認識不足だったようです。1,2幕のはじけぶりや3幕の泣き顔ロミオは、16歳の少年らしい喜怒哀楽の激しさがあって、可愛らしかったです。(といってよいのかどうか、迷ったのですが、他に適当な表現を思いつきませんでした) オットーは役柄で表情や雰囲気がまったく変わってしまうのですね驚きました。2人のバルコニーのシーンには情熱的というような生易しい次元ではなく、止めようのない感情が爆発する激しさを感じました。

ノイマイヤー版の「ロミオとジュリエット」は場面の運びや登場人物の心象風景がとてもわかりやすくて奥行きが感じられました。 修道士ロレンツォがジュリエットに薬を渡しながら説明するハッピーエンディングの場面を、後ろで旅役者が実際に再現して見せるのですが、薬を飲んだ直後のジュリエットの心情への伏線になっているのですね。 ジュリエットの脳裏にはまず死んだティボルトの幻影が、そして次にロミオの幻が現れ、「死への恐怖」から次第にこれからの幸せを夢見て眠りにつくまでのジュリエットの心の変化をとてもよく物語っていて、この場面はとても好きです。

興味深かったのは、いつもポーカーフェイスで決して本音や感情は表に出さない「貴族の大人の女性」(=キャピュレット夫人)と自分の感情に素直な、少女ジュリエットの対比がとても鮮やかに描かれていることでした。 アンナが演ずるキャピュレット夫人はまるで中世の絵画を見ているようで本当に美しかったです。夫人の、背中を軽く反らして、胸の前で独特の形で置かれている手のポーズ(うまく説明できないのですが)は自分の感情をおさえて生きると決意した女性ポーズのように思えました。ティボルトの死を知った時に、一転して髪を振り乱しての取り乱しぶりは強烈なインパクトがありました。 夫人とティボルトとの関係もとても明確に描かれていたので、なぜティボルトの死にあれほど慟哭するのか納得できました。そういえば昨年見たマイヨーの「ロミオとジュリエット」ではこの二人の関係がさらにわかりやすくはっきりとしていました。 マイヨーはハンブルク・バレエ出身だから、やっぱり影響を受けているのでしょうか?

エドヴィン・レヴァツォフの修道士ロレンツォが随分若くてロミオと同年代ぐらいに見えたので、ほかのバージョンとは随分違っているなと思いました。 実はこの事がずっと気になっていました。後日談になるのですが、ロレンツォはロミオの幼馴染という設定だということを知って納得した次第です。「ロミ・ジュリ」はあまりにも有名なので事前にストーリーチェックもしないで見たのですが、プログラムや公式サイトのあらすじには確かに「Brother Lorenzo, Romeo’s childhood friend」とありました。 これは独自の解釈なのでしょうね。ほかのバージョンや映画では修道士ロレンツォの年齢はロミオよりかなり上でしたから。

となると、ノイマイヤー版の「ロミオとジュリエット」にはまた違った面が見えてくるような気がします。 ロレンツォを含めた「恋愛至上主義のピュア(世間知らず)な若者たち」vs.「分別ある常識人」の図式が一層はっきりしてくるようで、なんとなく「小さな恋のメロディ」という、昔の映画を思い出してしまいました。
( maddie )